ブランコ

僕の家は学校の中にあり、主にその中で生活している。
学校の中に子供は住んでいないが、近所にはワンサカいる。
昔は学校のフェンスに穴を開けて子供がよく出入りしていたそうだが、
セキュリティが厳しくなったのと、そうして遊んでいた世代が大きくなったので、
最近はそういうこともほとんどなくなっているようだ。

それでも週に3回くらい僕の家のドアを叩く6,7歳の女の子がいる。
「ボールを貸して」とやってくるノンテーボとノンブーヨだ。
ノンテーボはよく一人でもサッカーをしているので何度か一緒にサッカーして遊んだ。
男の子に負けぬほど活発でありながらも、少し恥ずかしがりながら「ボール貸して」と言うところがいじましい。
服装もあまり女の子です、という風ではない。
一方、ノンブーヨはたまに一緒に来る女の子だ。
おそらくノンテーボと同い年くらいなのだが、性格は対照的で、
あまり恥ずかしがらず快活で、服装や仕草に女の子らしさを出したお増せさんだ。

家の前の大木に、紐を下げて棒を付けただけの懸垂マシーンを作ったら、
さっそく興味津々で紐でブランコの要領で遊び始めた。さすが子供、目敏い。
でも、ブランコ用に作ってないので「危ないから、ダメ」というと、
必殺技の眼力で何かを訴えてくる。
僕は即座に負け「今度もっとしっかりした紐を買ってくるから、それまでは待って」と言い、
ブランコを作ることを約束した。
翌日、ブランコのことは忘れたんじゃないかな、と思っていると、
「いつ作るの?」ときたもんだ。完全に負けで完敗という言葉があったなぁ。

それで作ったのがこれ。
さっそく乗って遊んでくれている。
学生も遊んでるし、しまいにゃ警備員まで乗って「押してー」と言ってくる。
こっちの人たちはブランコは押してもらうものと思っているようだ。
まぁ何はともあれ、気に入ってもらえたのでよかった。
これを見て学生の一人が家に欲しいと言ってきた。
彼女は学生と言っても僕より年上で、子供もいる。
その子供に作ってあげたいのだそうだ。
家にブランコは、僕の小さな夢の一つだったから、こうして南アの田舎にそういう家が出来るのはうれしい。
ただ、危険な遊び道具であることは認識しておかないと、ね。

と、こんなに仲良くやっていたと思っていた、ノンテーボが今日ボールを返しがてら、
ノンブーヨから伝言を預かってきたと気まずそうな様子だ。
ノンテーボらしい恥ずかしさのような躊躇いを含んだ様子で、
「この村から出て行け、って言ってた」という。
「なんじゃ、そりゃーーーっ!」。
なんだかもう何がなんだかわからなくなってしまったよ。
その後はテストの採点をしながらも考え込んでしまった。
やっぱり、まだまだ僕はよそ者で外国人で白人で敵。
彼らの中にあるわだかまりは大きいのかもしれない。
まぁ子供のいうことだからわからないが。
いや、子供だからこそ嘘偽りのない率直な感情なのかもしれないな。
心を強く、いきましょう。