視察準備

最近ムニシさんを見かけなかったが、今日久しぶりに学校へ来た。
なぜ来たかというと、明日視察が入るからだ。
その準備をしにだけ来たのだ。
ムニシさんは本部の人間には弱い。
本部から人がくるとわかると、そればかりを僕に強調し、
仕事を指示してくる。
学校へ来たら来たで本部の人に見せる書類やファイル作りに必死だ。
そんな姿を見て、この人はいったい何なんだろうか?
決して先生と呼べる代物ではないな。と思った。
生徒のことなど頭にはない、自分が仕事をキープすること、
視察の人にいい顔することしか頭にない。

それで僕は水面下で腹が立っていたので、
「お前が作った成績表をプリントアウトしてくれ」
と言われたときは、少し水面をざわめいてしまい、、
「あれは僕が作ったものであなたがやったものではない。
あなたの視察なのだからあれは渡せない。あなたの普段の姿を見せてやればいいでしょう?」
と少し意地悪を言った。
そしたら、
「お前は彼ら(視察団)の執拗さを理解していない。彼らを納得させるには必要なんだ」
と必死。その必死さを少しは生徒に向けてくれと内心思いながら、
「いやです、あれはあなたが作ったものではない。というかあなたは何もやっていない。そもそも来ていないじゃないか!
もしこれが欲しいのであれば、これから毎日来ると約束してください」と言った。
ムニシさんは苦笑いしながら、
「君の言っていることは理解できない」と近くにいたトワラさん(教頭先生みたいな存在)に助けを求める。
トワラさんはこの視察を受ける側の責任者なので、彼にも被害が出る。だから彼もムニシさんを見かねて手伝いに来ていた。
というより、彼がやっていた。
俺の英語が下手なのを理由に逃げる気なのだ。こういうとき英語がべらべら喋れないことを恨む。
しかし、トワラさんも僕の言った「毎日来てくれ」には同意していたようで、ムニシさんと僕のやり取りに
苦笑いしながら「申し訳ないが、視察は本当に大変なんです、成績表を出してください」とお願いして来た。
僕自身、ちょっとした意地悪心から渡さなかっただけなので、渋々の素振りを見せながら成績表を渡した。

その間、同室の喰尻さんとパセリ(Mpahlele)さんは楽しそうに僕とムニシさんのバトルを見ていた。
そう、彼らは楽しんでいるのだ。だからいつも「Where is Mr. Mnisi? Hahaha 」とか言ってからかって来る。
こっちにきて不思議なのは同僚や上司が注意したり、切磋琢磨することがほとんど見られない。
なんだか、触れてはいけない領域がそこにあるような錯覚を覚える。
だからムニシさんがこなくても誰もそれを注意しようとは思わないようで、キャンパスマネージャーですらそうなのだ。
その辺のことに南アの黒人社会の何かが隠されているように思う。今後ゆっくり見ていきたい。


数時間ムニシさんとは緊張状態にあったが、いろいろ気遣って資料を作ってあげたらその後は元通り。
よかった、よかった。これがしつこい人だったら彼も僕自身も耐えられないだろうなと思う。

つこい人だったら彼も僕自身も耐えられないだろうなと思う。