散歩2

プリセラとの約束どおり、仕事を終えてから、
散歩がてら大庭君と高校へ。

その道中がまた大変だ。
そこここで立ち止まってしまうので、行くまでに時間がかかる。

平日にこの道を通るのは初めてだったので知らなかった。
どのように彼らが生活用水を得ているのか。。。
道の交差点に写真のような水屋が立つ。
水屋といっても売っているわけではなく配っている。
それをうじゃうじゃいる子供たちがバケツを頭に乗っけたり、
手に持ったりして行ったり来たり。。。
ほんとにうじゃうじゃいる子供たち。

しばらく行くと行く手に包丁を持った男の子が草むらから飛び出してきた。
ギョッとして、男の子の目をじっと見ると、
「こっち来なよ」と言うので付いていくと、

くぼ地に茶色い牛が横たわっているではないか。
どうやらこれから血を抜くようだ。
男の子の持って来た包丁が牛の横に立った男に渡されると、
すっと倒れた牛の頸部に包丁が差し込まれ、
次の瞬間、引かれた包丁が赤く染まっていた。
何度か抜き差しした後、近くの草むらに血が流れていた。
クリスマスカラーコントラストが妙に鮮明で今でも目に浮かぶ。
それから窪地から牛の体を上げるべくトラクターがやってきた。
牛の首に付いたベルトとトラクターが引く鎖を細い針金が結ぶ。
(え!?絶対針金切れるでしょ!)
窪地の角に牛の体は引っかかりなかなか持ち上がらない。
そして案の定、針金は弾け切れた。
子供は包丁を持ちながらその回りをウロウロしている。
あらゆることにハラハラしながら見ていたが、
高校に早く行かないと先生がいなくなってしまうので今回はお暇することにした。

ベキスワゴ山の裏を初めて通ったが、また他の地区とは違った雰囲気があった。
静寂で落ち着きのあるように見えた。今度ゆっくり訪ねてみようと思う。

そしてベキスワゴ山の裏側がまたカッコいいんだ。
穂高の屏風岩を思い出した。

人はいないが牛はいる通りをしばらく行くと、高校に出た。
警備員さんが一人いるだけで学校はがらんとしていた。でもヤギはウロウロ。
これでは何も見れないのでまた来ることにして、今日はいつもどおり山に登ることにした。
風が湿っていてクルーガー国立公園の方が黒い雲で覆われていた。
小猿のような動物が僕らの様子を窺っていた。


大きめの道路に出たとたん子供たちに囲まれた。
どこからともなく子供が集まってくる。
ここまで大勢に勢いよく囲まれるとちょっと怖い。
近くの小学生たちやその弟妹たちだ。
一緒に歌(南ア国歌)を歌ったり、空手や相撲ごっこしたりして遊んだ。
大庭君(もう一人の隊員)のマイケルジャクソン真似といつも履いている足袋は大うけだった。
ここでも僕のタワシ頭は大人気で、四方八方から手が出てきてショリショリされた。
「ぜったいお前たち俺の頭で手を洗ってるだろ!」と言いたくなるくらい。
「猫みたい」とも言われた。もう、言われたい放題、触られたい放題。
腕毛も触ってくるから、脛毛も見せてやったら、
もう感動!
のように撫ではじめた。
やめてくれ。

写真とろうとすると、もう大変。
あ、レンズはやめて。。。
撮った写真を小さな液晶で見せようとすると、
身長が子供たちでバラバラなので下からも上からも引っ張られる。
あのクルクルの毛がびっしり生えた愛らしい頭がゴリゴリ迫ってくる。

彼らの持っているおもちゃにも驚いた。
[
どこで捕まえたのか、小鳥の足に紐つけて「ペット」と言って遊んでいる。
しかもみんなで引っ張り合うから小鳥はたまったもんじゃない。
もう足があらぬ方へ曲がって・・・
一瞬残酷だからやめなさい、、、と言いかかったがやめた。
これが彼らの遊びなのだからしょうがない。
実際日本人も昆虫やカエルを捕まえ似たようなことをやっているわけだし。。。

帰るときもしばらくぞろぞろ付いてきた。
もうまるで宇宙人になった気分だった。
いやぁ、それにしても大変だった。
今の日本の路地にはあれだけの元気は見られない。
これもひとつ日本が失くしたものかなぁ、と思った。