褒める

今朝も黙々とテストの模範解答作りをしていると、無似師さんが「チェックしてくれ」、
と作ったテスト問題を持ってきた。
分担した時に「お互いで作ってみて、チェックしあおう」と言っていた。

見て正直愕然とした。「これじゃまずいでしょ!」と思った。
ぜんぜんシラバスや指導要綱を参考にしていない。
問題も極めて簡単。
確かに僕のキャンパスの生徒は四角形の面積すら出せなかったりするので、
無似師さんの言うようにこういう問題がいいということもあるかもしれない。
でもこのテストは近隣の学校が一同に行うもので、
今までの傾向からもこんな簡単な問題は出されたことがない。

でもシラバスや指導要綱、教科書にも問題がある。
今の生徒の学力を考えたとき、これは小学生に高校生の教科書を使わせるに等しいことかもしれない。
使え、と指導されている教科書は結構実践のビジネス計画を練らせるようなもので、
色々な状況を想定して考える必要があり、なかなか奥深くレベルが高い。
生徒はそもそも掛け算割り算の概念がないので、そんな教科書では理解できない。
だからうちのキャンパスでは誰も使っていない。
決してこれは僕のキャンパス一つの問題ではない。
得体が知れず先が霞むほどの壁が立ちはだかって全く先が見えない。

さて無似師さんに話を戻そう。
必死になって言いたいことたくさんあるのを我慢して、
ここをこうしたらどうか、これは簡単すぎるからもう少し他の問題と絡めて出題してみては?
などと言ってみたが、僕の言い方に感情が吹き出てしまっていたらしく(今改めて考えると恥ずかしいほどに若かったな)、
無似師さんも素直に受け入れてくれなかった。明日もう一度話し合ってみよう。

一連のやり取りが終わった後、シニアボランティアの方から頂いたアドバイスを思い出していた。
――― まずは褒めなさい。その後に指摘があるなら指摘すればいい。どんな事にもいいところはあるはず。それを探しなさい。
あぁ、できなかったなぁ。まったく。
あまりに僕の描いていた結果と違ったので取り乱してしまい、長所を見つけるどこではなかった。
まだまだ、僕は若いな、と感じた。