小規模ビジネス

そんな状況を見てか、いや私欲が勝るだろうが、
僕の同僚パセリが近所に使われていない養鶏場を見つけてきた。
それを使えないか?と持ち寄ってきた。
ちょっと持ち主を聞きたいから付いてきてくれと。
行ってみると鶏を4000羽くらい飼育できる広さの施設があった。
建物も少し修理すれば使える。今は協会として一角が利用されているのみ。






ただ、電気と水、防犯用のフェンスがないのでここで養鶏するとなると初期投資がかなりかかる。
「こりゃ初めかなりかかるよ」と言うと、
来ました!
「JICAから寄付してもらえないか?最初さえ何とかなればいいんだよ」
支援を受けている側からすれば、もらえるものはもらおうという当然の考えなのかもしれない。
でも支援する側からすると、支援はあくまで自立するための手助けであって、
初めから支援を期待されるのは少し違うと思う。
できれば最終手段として支援に頼ってもらいたい。
しかもビジネスは金さえあれば誰でも成功できると思っている節がある。
だから、「JICAや日本政府が支援するのは個人ではなく、公的な機関のみだから無理だ。
それに君は来年からいなくなるんだろう?」と遠まわしに断った。
ホント責任感の欠片もない。
断り方がわれながら卑怯だがこの際しょうがない。
それでもめげず、
「俺がいなくても卒業生が何とかやる。これは卒業生の失業対策だ」
とパセリは言った。
「学生にって、素人に経営させるつもりか!?
むむでも待てよ、コミュニティを巻き込めば少しは可能性があるかな、考えておくよ」
と言って、その場をやり過ごした。
確かに失業問題、会社のない田舎街の活性化を図るにはちょうどいいかもしれない。
少し真剣に考えてしまった。
恐るべしパセリ、彼のパワーはすごい。
そこでコミュニティとの関係はどうしたらいいか。

・輸送費がかからないので鶏を地域に安く提供できる
小規模なので本当に安くできるか?という疑問は残る。

・養鶏場からでる鶏糞を肥料として提供すると共に、肥料の使い方、
栽培の仕方など、農業学校を卒業した生徒ならではのサービス。
近隣の家では家庭菜園が行われているが、肥料をあまり使わないので収率が悪いのでこれは地域活性化が期待できる。

僕らのアイデアはこれくらいしか出ない。
しかもビジネスとしての強みも殆どない。
また、今考えている施設は個人所有のものなので、
日本が支援するのは難しい。

やはり正直言ってビジネスをやるなら自分たちの力でやって欲しい。
そこでパセリに「やっぱり支援は期待できない、他の方法も考えよう」と
あれこれ詮索していると、FETカレッジは結構なお金を持っているらしいことが判明。
ただ、手続きなのどに手間がかかるのだそうだ。
(それならそれを使えよっ!日本の税金を何だと思ってるんだ!)と突っ込みたくなった。
というわけで方向をFETの資金に向けることにした。

でも、これだと地域活性化は難しくなる。さてどうしようか・・・
どっちにしろもっとコミュニティを僕自身が観察しなくてはいけないだろうな。
彼らが何を求めて、何が本当に必要か、見定めなくては。

これらのやり取りから見えてきたこと。
・やはり支援を受ける側は支援に頼りすぎてしまう
・こっちの人は初期投資さえ何とかなればビジネスなんて簡単だと思っている
・南アの黒人には土地がない。今では国が土地を回収しているとは言え、いまだ白人が所有する土地は厖大だ。
 僕の任地の郊外、山麓には大きなバナナ農園が広がる。
 そこは白人一家が経営しており、その農園で作るバナナが街の市場を独占していると喰い尻さんが不平を漏らしていた。