パセリの思惑

いつも通り職員室で仕事をしていたら、パセリが警察に行くから付いてきてくれ、と。
同僚たちもこっちではあまり一人行動をしたがらず、ちょっとそこまで買い物に行くのでも誰かを誘う。
1人でいるのを嫌う。いつだって話し相手が欲しいのだそうだ。

初めて南アの警察署に入る。特に緊張した空気は感じられなかった。
受付には例のごとく、マスコット化しやすそうな笑顔のズマ大統領の写真が飾られている。
そしてその隣にはと警察署長などの写真が飾られている。
警察署長は見た感じ30代くらいで、とても若い。
まさか若いときの写真を使っているのでは?と疑うほどに若い。

プレハブの取調室兼証明書発行所が敷地内に所狭しと林立していた。
プレハブ内のブースは少し日本の交番に似ている。
でも一つ明らかに違うところが。
ブース内の壁にびっしり貼られた写真に目が釘付けになった。
異常に下半身が太った水着姿の女性や、パンツの尻側に穴の開いた人、
金属製の貞操帯を嵌めた男性の写真など、いわゆるちょっと変わった人たちが飾られていた。
これって、社会的に許してもらえずに、可哀想にも警察に検挙されてしまった人たちなのだろうか。。。
それともここのブースの主(警察)の人には言えない(けど見せられる)趣味なのだろうか?
などと勝手な想像ばかりが膨らんだ。

と、あまり警察署に来た感覚を持てないまま、パセリの用事が済み署を去った。
帰り道、何の書類をもらいに行ったのか聞いてみると、
なんと!
パセリも別の職を探しているのだそうだ。
「も」というのは喰い尻さんも来年には別の職を探してどっかへ移るという話をしていたからだ。

我がキャンパスの若手が二人も去ってしまう。
これを見るにつけ感じるのは、FETカレッジの先生って先生になるのが目標ではなく、
先生は単なる仮の姿、踏み台にしか考えていない。
だから先生として生徒に教えるという意識も持っていないように感じるし、
授業をしないでも平気。
学校の仕事サボって修士論文かいていたり、
仕事中にどっかへ飛んでいってしまう。
こんなのではちゃんとした教育者は育たないのではないか。
これでいいのか、F E T。
そもそもパセリは契約講師、パーマネントではない。
だから彼は三ヶ月に一度契約書にサインして、契約を更新し続けなければならない。
これではいつ契約を打ち切られてもおかしくないと、安心して働くことはできないだろう。
FETの問題点は優秀な先生がいない、こともあげられるが、
先生を育てる環境がないというのも問題点だと思う。
どんな分野も最初から優秀な人というのは稀だ。
経験を積んでプロフェッショナルになっていくのに。
他のキャンパスの事はよく知らないのではっきりとはいえないが、
他任地の隊員の話を聞く限り、決してこの状況は我がキャンパスに限ったことではないと思う。

とにかくせっかく分かり合えて来たパセリまでもが去ると聞いて、少し落胆した。
警察署から帰ってから一気にやる気が失せてしまった。
僕らFETに派遣されたボランティアは生徒に教えるのはもちろん重要だが、
それよりももっと重要なのは講師とアイデアを組み合わせて新しい局面を切り開いていくことにある。
こう講師の入れ替わりが激しいと、講師と手を組んで何かをするというのは難しくなる。
喰い尻さんが最初のころに言った、二年間でお前の持っているスキルを全部もらう、だからお前も俺のなにかを盗め。
Exchangeだ。
という言葉が今は虚しい。。。