もろこしのためならえんやこら

夕方畑仕事に行くかと長靴を履いて準備していると、
買いたいものがあるから付いてきてくれ、と言う。
パセリに付いていくと必ずと言っていいほど発見があり面白ので、
最近は何か誘われると付いていく。


僕の住む町。左に写っているのがメインの幹線道路。
日がだいぶ傾いたとはいえ歩くと汗が吹き出る。
20分ほど歩いて店が数件集まってできた人のたまり場に出た。

その一角でトウモロコシを焼いて売っているおばちゃんがいた。
パセリはそこでトウモロコシを買いたかったのだ。
それだけかぃ!?と言いたいところだが、
いや、彼のトウモロコシに対する気持ちに脱帽だ。
僕にももちろん買ってくれた。

おばちゃんの写真を撮ろうと構えたら、
「何してるの、そこの中国人、お金払ってちょーだい」と言われた。
まぁ何も言わずに撮るのは悪かったかな、といろいろ考えながら
じーっと色白の(こっちでは甘みの少ない白い品種が主流)
もろこしちゃんが焼かれるのを見ていた。
その間パセリとおばちゃんが何かスワジ語で話しており、
おばちゃんが突然謝り始めた。
何がなんだか分からず、パセリに聞くと、
「お前のことジャーナリストと間違えたらしい。
ジャーナリストは彼女みたいな貧乏人をネタに金持ちになるから嫌いなんだと」と。
どうやら僕が日本人でボランティアで来ていることを説明してくれていたらしい。
こういうところもパセリの頼もしいところだ。
なんだかこっちが申し訳なくなってしまって、
「全然気にしてないから大丈夫ですよ」と言った後も、何度も謝っていた。
こうして仲間がいてくれなかったら、僕は彼女に誤解され、
僕自身もなぜ彼女が撮られるのを嫌がっていたのか分からずに終わっていたことだろう。
言葉が分からないので、こっちの人に助けてもらわなければ僕は右も左も分からぬ幼児だ。

トウモロコシ、焼きたて。味付けはしてない。

少し透明感のあるトウモロコシの一粒一粒が日に照らされいい顔をしていた。
うまいものを教えてくれるときにパセリはいつも「It is very nice.」と
腹の底から声を出して言うのだが、その言葉も3回目の途中でトウモロコシに消えた。
焼きトウモロコシは彼の好物のようだ。
こっちのトウモロコシはスイートコーンとは違い少しモチモチしていて、水気も少ない。
うん、旨い!かじって粒の皮を歯で割るたびにプチュとモチモチを感じる。
しかも焼いてあるから皮がなかなかの根性を持っていていい。