僕のカウンターパート2

今までムニシさんの事をあまり良く書いたことはない。
かつての記事。
僕のカウンターパート1
一ヶ月
無似師など。

それはムニシさんに魅力がないからではなく、僕の観察力のなさから来るものだと最近気がついた。
一度先入観を持つとそれにしがみ付いてなかなか離れることができない。
最初に会ったときから酒の匂いがしていたので「うわっ、やるなぁ・・・」とかなり構えてしまった。
その時点で守りに入ってしまったのかもしれない。
この人は呑んだ暮れで働きもせず、いつも新聞読んで「ムニシ節」で唾飛ばして、「こんな仕事は大変で嫌だ、もっと楽でいい仕事ないかなぁ」とか、「生徒が悪いから俺は授業しない!」と悪いところばかりを拾い集め、それでムニシさんはこんな人、思い込んでいたのだと思う。

でもそれは違う。まぁ先生としてはちょっと???なところもあるが、それはあくまでムニシさんの一部でしかない。
彼は双子の息子をとても大事にしていて、嬉しそうに息子のIDカードを見せてくる。
南アはアパルトヘイトの名残なのか(ちょっとこの辺は勉強不足で正確ではない)、みながそれぞれIDカードをいつも所持している。
持っていない人は警察に職質されたときにアウト。
今でもIDナンバーを見れば人種が判断できるようになっている。
それからIDナンバーはその人の年齢も教えてくれるようになっている。
これらのことはムニシさんが双子の息子の説明をする中で教えてくれたことだ。

双子のうちの一人は消化器系に腫瘍ができていて、病院を出たり入ったり。
そのときの保険証も見せてくれいろいろ説明してくれる。
時には医療費明細をも見せてくれ、「こんなに取りやがった」と愚痴をたれることも。
先日僕が作った掛け算九九表を「そういえばムニシさんとこのお子さん6歳になるんじゃないですか?
そろそろこういうの必要になってきますね」と言って渡したら、
嬉しそうに「まだ分からないだろうけど、壁に貼っておくよ」と言って受け取ってくれた。


彼の実家は比較的裕福で、この近辺ではお金持ちが集まるWhiteriverという町にある。
彼は子供のときからこの近辺で育った根っからのムプマラン子だ。
大学入学と同時に大都会ヨハネスブルクへ出て、世間の荒波で揉まれてきた。
だから他の同僚のパセリ(ちょっと垢抜けない田舎男)や喰い尻(田舎のガキ大将)とは違う味を出している。
決定的な違いはキリスト教を盲目的に信じているのか、それとも他の世界を知って信じているのか、という違い。
ムニシさんは色んなことを知っている。世の中には他の宗教もあって、キリスト教は多数派ではあるが、絶対的なものではないということをしっかり認識している。
だから職員室で「進化論」の話をしたときにパセリは「へしっ!」と言って目を点にしていたが、
ムニシさんは「進化論は寧ろ一般的な考えだ」と言ったり、
「宇宙のインフレーション」の話が出たときも「我々は自分の考えを主張するより、他人の考えを尊重することが重要なんだよ!」
と言う姿には心から感服した。


かつて寿司を握って先生や清掃員に日ごろのお礼として振舞ったことがある。
その時一番興味をもっていろいろ聞いてきたのはムニシさんである。
やはり自分の国のことを興味持って聞かれるのはとても嬉しい。
と、同時に「うわぁ、全然日本のこと知らないなぁ」と反省させられる。
このときも「うちの嫁さんに食わせてやりたいから持って帰っていいか?」と
タッパーに寿司を詰め始めた。嫁さん想いな一面もある。
何度か奥さんにも逢ったことあるが、尻に敷かれているような感じもあってGOO。

そんなムニシさん。
今月は給料日までまだ一週間以上あるのにもうお金が、、、
ビールを飲めなくて元気がないよ。