パキスタン人の店の被害

まだストライキは続いているので夜でも外はにぎやかだ。
たくさん動いたせいで疲れ、四阿で休んでいると、ナトリウムランプでオレンジに色付けされた暗がりから妙な音が聞こえてきた。
ものを激しく破壊する音。100mくらい離れた店の方だ。
喰い尻さんが「店が襲われているな」と言う。
みんな商品を掻っ攫っていくのだと言う。
昼間の暑さが残る夜でも寒気を感じた。

案の定翌日昼間にパセリと見に行くと店は被害を受けていた。
扉が破られ、見るも無惨に商品がごっそりなくなっていた。
しかも厭らしい事に「パキスタン人が経営する店」だけが被害を受けていたのである。
隣の黒人が経営する店は全くの無傷だった。
無性に怒りが沸いてきた。
何が人種差別はなくなった、この国は自由だ!だ。
そして暴力に怯え商品を泣く泣く渡したパキスタン人が哀れでならなかった。
日ごろ近隣住民は近くで物が買えるという恩恵をこのパキスタン人から受けているのではないのか?
調子のいいときだけマイフレンドと声をかけ、ちょっとした事で簡単にそんな言葉は捨て去られる。
ストライキで食べ物がないからと言うだけなら、金を出して買えばいい。
金は持っているんだから。
実際のところ南アでは政府の援助が手厚いので、食べ物が買えなくて飢える人は殆どいない。
この近辺に限って言えば聞いたことはない。
酒におぼれて金がなくなっているのはよく聞くが。
公平を期してムニシさんの弁明も載せると、パキスタン人やインド人は税金も払わず店をやっている無法者だと聞く。
だから日々の鬱憤が募って襲ったんだと言う。
でもそんなものは子供の理論だ。
結局自分たちが働かずして物を欲しかっただけのことに過ぎない。
こっちの人に対する僕の嫌いな部分が浮き彫りになった出来事だった。

それでも大多数の人はそんなことをする人ではない。
でも彼らを止めなかった(止められるものでもないが)のは事実だ。
そういう社会を暗黙に許しているのも事実だ。