寿司屋の中国人

大きな街(ネルスプリットNelspruit:ムプマランガの州都)へ出たついでにサーモンの切り身を買ってきた。
近くの町には売っていないが、少し足を伸ばすと、中国人が握る寿司屋があり、そこで生魚を買える。
前回行ったときは50代の小さくて、丸っこくて、
ひとのよさそうなおじさんが寿司職人らしく前掛けを着けてやっており、
僕らを見つけるなり、「あい、いぇろー」と言ってきた。
最初は中国語かな?と思っていたら、
「I am yellow.」だった。
おじさんの気が弱そうだけど、優しさを含んだ笑顔が終始飛んでいた気がする。
このおじさんはほんのわずかに英語が通じた。

しかし今回行ったら20に満たないような若者に代わっていた。
先日の人はあなたのお父さん?
と聞いたが、英語は分からないと返ってきた。
中国人には感心する。
彼らは言葉も通じないところで日々商売に励み、
もくもくと生きている。逞しい、逞しすぎる。
近所のマーケットにもたくさんの中華系ショップが立ち並んでおり、
家族みんなでで経営していることが多い。
彼らも他国のアジア人を見るのが珍しいようで、一度行っただけで顔を覚えてもらえた。

僕の周りの南アフリカの人は中国人を馬鹿にする気がある。
だから中国人と同じ顔の僕らも「チャンチュンチョン」などとからかわれる。
先日のスポーツデイにアナウンサーに公然とやられたときは閉口した。
あなたたちの悲しい歴史を忘れたのですか?と言いたくなる。
それの延長線上にアレがあるのではないですか?と言いたい。
国レベルで見たら僕も中国に納得できないことはたくさんある。
でも個人の関係で見たら中国人はすごいと思っている。
決して侮れない。見習うべき点は多々ある。

寿司屋

南アフリカでは寿司は結構メジャーな食べ物になっている。
といっても田舎での知名度はとても低い。
数パーセントくらいしか知らないし、食べたことある人は皆無と言っていい。
しかし、街では寿司レストランやスーパーでパックされ売られている。
しかもなかなかの売れ行きだ。
プレトリアの寿司屋も中国人がやっていた。
そのせいか、店の雰囲気が中華料理屋っぽかった。

魚もののネタは殆どがサーモンで、稀にマグロがあったりイカがあったりなかったり。
握りよりも裏巻きにした巻き寿司が多い。
それからアボカドが多用されているのも特徴だ。
俗に言うカリフォルニアロールをイメージしてもらえばよいだろう。
ネルスプリットの店で待っている間、ショーケースに入った4匹のサーモンと睨めっこしたり、
この若き中国人に感心しながら観察していたら、
彼は日本人に監視されていると思ったのか、ちらちら僕を気にしていた。
また、買って行く客は10分くらい見ていて4人すべて白人だった。
しかも常連っぽい人がいてパックされたものではなく直接注文していた。
黒人が買わないのは一つに値段が高いこと。
一パック1人分くらいで600円ほど。
店で普通に一食を買えば150円に満たないことからもその高級感が伺えるのではないかと思う。
もう一つは黒人はあまり食に関して冒険をしない、気がするのだ。
これに関しては次の記事で書こう。

冒険好き遺伝子

南ア黒人があまり食に関しての冒険をしない点について。
これはこっちに来て日本食を見せるたびに思うことである。
「これは奇異なるかな、面白い、試してみよう」とはならない。
結構遠巻きに見ながら誰か仲間が食うのを固唾を呑んで見守っている。
それで大丈夫なら少しだけ手を付けてみる。こんな感じ。
これには勝手な空想により得た仮説がある。以下信じないで欲しい。
そもそも南アにいるボーア人やイギリス人などの白人は、
1600年ころから始まった入植により冒険遺伝子が選択されているのだ。
未知の土地に出向いていくのが強制的であったにしろ、冒険好きな人はその境遇を楽しみつつ生き残りやすかっただろうから、
冒険好き遺伝子が少なからず選択されているに違いない。
一方入植された側である黒人はそのような選択圧にさらされることはなかった。
だから新たな食べ物が目の前にあるときに試すか試さぬかに違いが出たものと考えている。